保育園ではだし保育を行うメリット(ねらい)は?デメリット・注意点についても

保育園や幼稚園の中には、子どもたちにはだしで生活させる「はだし保育」を実施している園があります。

電車や車に乗ることが多く、歩かなくなった現代の子どもたちに「丈夫な体を作ること」をねらいとして、自分の足で歩くことや足裏の感覚を鍛えることを目的としています。

しかし、「子どもを自然な姿で育てたい」と思う親御さんや保育士は多いものの、子どもたちに裸足で生活させるとなると、多少の不安も出てきます。

はだし保育を行うことで、子どもたちにはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?

ここでは、「はだし保育を行う保育園や幼稚園に興味のある保育士、幼稚園教諭さん」に向けて、どのような効果やメリットがあるのかを中心に紹介していきます。

はだし保育は子どものバランス感覚を育てる

足の裏には、地面をつかんで歩くために、アーチ状になっている土踏まずがあります。

生まれて間もない赤ちゃんには、この土踏まずがなく、全体的に凹凸のない、平らな足の裏をしています。

ですが、立ち上がったり、歩き始めたりする頃に、少しずつアーチができあがり、8歳くらいにはしっかりした土踏まずになると言われています。

 

ところが、最近は土踏まずが平たんな足の子どもが増えているのです。

これは、ひと昔前にみたいに、野山を駆け回って遊んだり、運動する機会が少なくなったことが原因のひとつと考えられています。

また、幼児期からクッション性の高い靴を履いている場合も、土踏まずの成長が阻害される要因になっています。

土踏まずが平たんである場合、

  • 「和式トイレで座れない」
  • 「転びそうになってもとっさに足がでない」
  • 「片足でバランスが取れない」

などの弊害が出てきます。

だからこそ、運動神経やバランス感覚を養っていくうえで、足の裏の土踏まずのアーチが形成されることはすごく大切なのです。

はだし保育を行うメリット・ねらい(健康・教育)とは?

足裏の感覚を強くする

はだしで遊び、生活していると、足の裏が刺激され、感覚が発達してきます。

暑い・寒いだけではなく、芝生や土、砂などの自然の素材の硬さや柔らかさなど、細かな感触にも気づくようになります。

はだしで生活することで、

  • 「芝生の心地よさ」
  • 「泥のぬるぬるした感覚」
  • 「土のざらっとした感触」
  • 「石が堅い」

などの感触が、感覚器を敏感にしていきます。

こうした自然の素材から感覚を養っていくことも、はだし保育を実施するねらいと言えるでしょう。

足の裏の感覚が脳幹・小脳・視床下部の発達にも影響を与える

足裏は「第二の心臓」と呼ばれるほど、沢山のツボ(リフレクソロジーでいう「反射区」)が集まっています。

はだしで生活することは、自然にこれらのツボを刺激することになります。

ツボ押しやリフレクソロジーには、深いリラクゼーション効果がありますが、リラックスすることで、脳に酸素がしっかりと行き渡るので、集中力や思考力が高まるメリットがあります。

足裏から受ける刺激は、感覚を敏感にしていくと共に、足裏からの刺激が、脳にダイレクトに伝わっていきます。

とくに、

  • 身体の平衡感覚を司る「小脳」
  • 呼吸や脈拍など恒常性を司る「脳幹」
  • 自立神経やホルモン分泌に関わる「視床下部」

に影響を与えていきます。

歩くことや足裏への刺激を与えることは、身体を作る上でも、発達を促すうえでも大切なのです。

足裏を刺激することで、風邪予防など健康効果が期待できる

足裏のツボが刺激されると、リラックス効果だけでなく、「血行が促される」など、健康面でもいい影響があると考えられます。

例えば、子どもは大人より1枚少なく服を着ることで、冬場汗をかいて風邪をひくことが少なくなり、適度に体温調節することができるようになりますが、これは足にも同じことが言えます。

とくに冬場は、一枚薄着で過ごすことで、風邪をひきにくくなるメリットがあるのです。

また、夏場は足を開放しているので、「足裏がムレにくい」メリットもあります。

このように、健康で丈夫な身体づくりを目指していくことを目的に、はだし保育を取り入れる保育園や幼稚園もあります。

月齢が小さな子どもは転倒防止になる

6か月から1歳くらいになると、伝い歩きやひとり歩きを始めます。

このくらいの子どもたちは、歩くことに慣れておらず、足や足の裏の筋肉が未発達なのでよく転びます。

ですが、靴下を履かせてしまうと、つま先立ちがしにくく、足の指や足の母指球をしっかり使って、床や地面をつかむことができません。

また、靴下が「滑り止めが付いていない」「履いている内に脱げかけてしまう」などから、履いている靴下につまずいてしまったり、滑って転倒しやすい状態になりがちです。

しかし、はだしで生活するようになると、足裏が刺激されて発達するので、転倒する機会も減りますし、ケガのリスクも少なくなるメリットがあるのです。

はだし保育のデメリット|怪我やしもやけの心配は?

足の裏に怪我をしてしまうことも

靴を履かずに過ごすことにこだわり過ぎると、足に怪我をしたり、足の裏の小さな怪我からばい菌が入り、化膿したりするリスクもあります。

  • 「足先をぶつけて怪我をするものがないか?」
  • 「危険なもの(押しピンや、トゲなど)が落ちていないか?」
  • 「土壌のばい菌やごみなどの衛生管理は?」

など、園内の環境整備はとくに気をつけなければなりません。

子どもたちが安全にはだしで過ごすには、保育室や園庭の環境を見直し、安全点検がなされていることが重要なのです。

 

また、地震や火事の緊急事態の際に、夏の焼けたアスファルトに足をついてしまい、足裏を火傷をする可能性も出てきます。

地震の際は、割れたガラスや、がれきの上を歩くことも想定しておかなくてはなりません。

「緊急時の対策はどうするのか?」

ということも園で話し合っておき、避難訓練の時に子どもたちに靴を履く訓練をすることも検討しておく必要があるでしょう。

冬場はしもやけの原因にもなる

寒い時期には、外からはだしで帰ってきて、温かい室内に入るとしもやけになってしまう恐れもあります。

軽度のしもやけであれば、治癒するまでに時間を要しません。

ですが、重度のしもやけになると、皮膚が裂けてしまい、傷が残ってしまうこともあります。

冬場にはだし保育を行う保育園や幼稚園は、

  • 「足を寒さから保護すること」
  • 「冬場ははだし保育をやめる」

という対応も求められるでしょう。

小学校に入ってから、靴や靴下が履けないなどの弊害も

小学校に就学すると、屋内外問わず、靴下と靴を着用して過ごすようになります。

ですが、はだし保育で幼少期を過ごしていると、

  • 「靴下を履く感じに違和感を覚える」
  • 「靴を履くことを窮屈だと感じる」

ケースも少なくありません。

また、靴下や靴を履くことに慣れていないため、低学年の間は、

  • 「下足から上履きに履き替えるのに時間がかかってしまう」
  • 「左右逆に履いてしまう」

ことも考えられます。

緊急時には、混雑することから立って靴を履くことや、片足で立ちながら靴を履くことができることが重要ですが、慣れていないと簡単に見に付かないことも懸念されます。

はだし保育を行っている保育園・幼稚園の教育方針は?

実際に裸足保育を行っている保育園や幼稚園を調べ、どのような教育方針を掲げているのかを紹介します。

・のぞみ幼稚園

東京都足立区にある、学校法人岡村学園のぞみ幼稚園では、子どもたちに最高の教育を提供することを目的としています。人間形成をする幼児期に教育の基礎や生きる力を身に着け自立できるように教育活動を行っています。将来にわたって健康なからだづくりをすることを方針に掲げ、はだし保育を取り入れています。

http://www.nozomi.ed.jp/index.html

・太陽保育園

和歌山県和歌山市にある社会福祉法人太陽福祉会太陽保育園は、「元気で強い子づくり」に取り組んでいます。独自の「元気になる保育」を実践しながら、自然治癒能力を高め、困難に立ち向かっていけるたくましい子どもに育つように、「健康な身体、豊かな人間性、集中力・思考力」を育むことを保育理念としています。

http://www.taiyo-hoikuen.net//kenko_hoiku.html

・中里幼稚園

東京都練馬区にある中里幼稚園では、四季が感じられる自然環境を活かし、激動の時代であってもたくましく生きてほしいとはだし保育を実践しています。

心身の強い子、自分で考えて行動できる、心豊かな子どもになるなど教育目標を掲げ、特色のある保育活動を行っています。

http://www.nakazato-youchien.jp/

自分の理想とする保育・教育方針にあった職場を探そう!

心身が鍛えられていくことや、バランス感覚が培われることで、子どもたちの健やかな健康を助長してくれることをねらいとしているのが、はだし保育を行う理由になります。

自然の中で、自由に駆け回る子どもたちは、たくましく力強くも感じますよね。

もしも、あなたが「自然に囲まれた環境で、のびのびとした保育を理想としている」なら、はだし保育を行う保育園や幼稚園は、自分の保育(教育)ポリシーとマッチすること間違いありません。

自分の目指す保育(教育)ができることは、仕事でのストレスが少なく、向上心や勤労意欲も高まります。

これから新たな保育園や幼稚園に就職する際は、上記に記載したメリット・デメリットを踏まえて、職場を探してみましょう。