保育士が年度途中に退職するのってどう?退職・転職への影響や辞めるのにベストな時期・タイミング

保育士を目指して勉強し、学校を卒業して資格を取ったのに、実際に保育の現場に入ってみると「辞めたい」と思うことは少なくありません。

保育士の仕事は、激務で仕事量や拘束時間も多く、早朝出勤などもあるので、一般の会社と比べると激務で離職率も高い仕事だと言われています。

ですが、保育士の仕事は年度の縛りがきつくて人手が少ない業界です。

なので、『年度の途中で辞められるか?』『辞めて良いものなのか?』迷うこともあるのではないでしょうか?

厚生労働省職業安定局が出しているデータには、保育士資格がありながら就職していない保育士(保育士としての勤務経験があるもの)の10%が、「1年未満つまり年度途中で辞めている」という実態があるものの、年度途中での退職はご法度的な空気があるので、何かと不安が隠せません。

【出典】厚生労働省職業安定局「保育士資格を有しながら保育士としての就職を希望しない求職者に対する意識調査」(平成25年)

この記事では、保育士の年度途中での退職について、一般的にどう思われているのか?や、どうしても辞めたい場合のおすすめの退職時期や退職理由などを詳しく解説しています。

後半では、転職・再就職への影響についても記載しているので、新年度に入ったけど、辞めようかどうか迷っているなら、最後までじっくり読み進めてみてください。

保育士が年度途中の退職を避けるべきとされる理由とは?

① 子どもや保護者に悪影響を及ぼす可能性がある

保育士は、4月に新クラスの担当となり、入園式や保護者会などで自己紹介などの挨拶をし、年度がスタートし、3月までの任期を全うすることが慣習となっています。

子どもにとって、担当保育士は働くお母さんに代わって愛情を注いでくれる「第二のお母さん」です。

4月は泣いてばかりの子どもたちも、毎日保育園で生活をし、行事を重ねるごとに担任の先生や関わってくれる先生に愛着を持ち、慕ってくれるようになっていきます。

とくにクラス担任の保育士は、クラス運営だけでなく、一人一人の癖や特性、好き嫌いなどを把握し、その子どものことを誰よりも詳しく知っています。

担任保育士でないと分からないこともあるので、年度の途中で急に先生がいなくなれば、不安になったり、急な環境の変化に対応できず、泣いたり情緒が安定するのに時間がかかったりする子もいます。

 

また、保護者から見ても、我が子を担当している保育士は、仕事や家庭状況など、子どもの環境や癖などを良く知っていて、安心して預けられる存在です。

我が子の成長を一緒に共有し、時には育児の悩みを相談できると、担当の保育士を頼りにしている場合も多いのです。

ですが、途中で辞めてしまったと分かると、再度子どもたちや保護者の方々と信頼関係を1から構築しなおさなければなりません。

子どもだけでなく、保護者も新しい保育士との信頼関係を築くのに時間がかかることもあり、残された人たちに少なからず悪影響を及ぼします。

② 保育士不足ですぐに代わりの人材を補てんできない

保育士の確保状況データを見ると、保育士の有効求人倍率は高く、常に保育園では人材不足となっています。

このような状況下で、すぐに代わりの職員を補てんするのは難しいです。

有効求人倍率が全国平均で1.51倍ともなれば、求人を出しても、すぐに人材が集まる状況ではありません。

応募が殺到しやすい2月~4月ならまだしも、中途半端な時期だと、よほどいい条件で無い限り応募が集まらないので、年度途中の退職は、保育園側からも何とか離職しないように引き留められるケースも多いのです。

③ 年間計画を組んでいるため、担当を再検討しなければならない

保育園の人事は、前年度に退職する保育士と、新たに就職・異動する保育士の人数から決定していることが多いです。

とくに、1番重要なクラス担任については、適正や経験などを踏まえて配置されています。

なので、クラスを担任してた職員が一人でも欠員がでると、「その補填についてどうするか?」保育園ですぐに対応を急がねばなりません。

この場合は、保育士の数が多い大型保育園では、クラスを持たず状況に応じてクラスに入ってくれるフリー保育士や、クラスを担当していない主任保育士が、経験などに応じて、クラスを担当します。

ですが、担当を再検討するのはもの凄く大変です。

また、例えば保育園の行事などは、ベテラン保育士でないと運営が難しいこともあります。

もしも、行事前に辞められると、別のクラスを持っていた担任が、辞めてしまった保育士のクラス担任となることもあり、クラス担当を再編成しなおすなど、多大な労力がかかるのです。

民法では自己都合退職についてどう定められているのか?

年度途中で保育士を辞めにくい実情がある中で、民放627条を紐解くと、

「就業規則などで、特段の規則を設けていない場合、いつでも自主都合退職をすることができる。この場合、退職をする旨の申入れの日から2週間を経過することによって雇用契約は終了する。」

となっています。

つまり、就業規則などで、「辞める時期が明確に記載されている」または「派遣や雇用期間が決まっている」場合を除き、期間が決まっていない雇用契約の場合は、退職しようとする2週間前に申し出るといつでも辞めることができるのです。

 

ただし、前述したとおり、保育士は常に人材不足であることや、子どもや保護者への影響を考えることは必要です。

「辞めたくなったから2週間後に辞めます」というのは、社会人としてはマナー違反です。

しかるべき理由があること、きちんとした手順を踏むことで、年度末以外に辞めても周囲から責められることなく、また自分自身も後悔することなく退職することができるのです。

保育士を辞める時期・タイミングはいつが最適?

① 後任保育士が見つかるまでに引継ぎできる準備をする

保育業界では常に人材不足です。

昨今のニュースでは、人材確保ができず、保育園が閉園してしまったケースもあるほど深刻です。

募集しても応募が無いので、保育園側で新たに人材を確保するまでに時間がかかり、退職の意思を伝えても、なかなか辞めさせてもらえない、説得される場合も少なくありません。

 

そのため退職の意思が固まったら、遅くとも『2~3か月前』には上司や園長に退職の意思を伝えるようにしましょう。

退職したい旨は、できるだけ早めに伝え、退職希望日までに後任保育士を確保してもらえるように伝えておくことが大切です。

そして、退職するまでの2~3か月の間に、児童票などの成長記録、アレルギーや発達が気になる子など、配慮が必要な子どもなどの引き継ぎができるように準備しておきます。

後任の保育士が決まってから、クラス運営がスムーズに進むようにしておくことで、保育園側の運営に支障が出ないようにしておきましょう。

② イベントや大きな行事の後、長期休暇の前は退職しやすいタイミング

運動会やお遊戯会などの大きな行事や、園独自でのイベントがある時期は、とても繁忙な上、まったく人手が足りない状態です。

なので、この忙しい時期に、退職の意思を伝えるのはベストな時期とは言えません。

また、行事の前に退職を申し出されると、現場の士気が下がります。

タイミングとしては、こうした繁忙期を避けるようにし、年度途中に退職を申し出るのは『大きな行事の後』がベストです。

退職するタイミングは、夏休みや冬休み、春休みの時期であれば比較的行事が少なく、落ち着いていますし、学期の節目になるので、長期休暇の前が辞めやすい時期と言えるでしょう。

③ 賞与(ボーナス)後の退職はやめておいたほうがよい

保育園にもよりますが、一般的にボーナスが支給されるのは6月、12月です。

ボーナスが出たら辞めるというのも区切りとして良さそうに思えますが、「ボーナスが出たから辞めた」というのは、周囲にもあからさま過ぎるため、もう少し考えた方が良いでしょう。

しかし、ボーナスの査定前に退職の意思を伝えてしまうと、ボーナスの査定に響き、減額されるケースもあるかもしれません。

このような事態を想定すると、『ボーナスが支給されて2か月くらいたった頃に退職を伝える』ようにすれば、ボーナスを貰ってすぐに辞めたという印象を与えることもなく、スムーズに退職できます。

具体的には『8月、10月、2月』ぐらいがベストのタイミングでしょう。

断られにくい退職理由は?~円満退職のために~

退職したい理由は様々なので、退職理由は悩みどころですが、一般的には

  • 体調不良
  • 親の介護や育児など家庭の都合
  • 結婚、妊娠、出産

などは断られにくく、円満に辞めることができます。

また、

  • 保育園内の先生同士でのいじめ
  • クレーマーやモンスターペアレンツなどの保護者対応で苦労している
  • ○○の資格を勉強したいが、仕事との両立ができない(海外で勉強したいなどの理由も)

など、自分では解決しにくい人間関係や、前向きな理由で辞める場合も引き留められにくいでしょう。

ただし、

  • 仕事量が多い
  • ピアノが苦手
  • 書類が書けない
  • 子どもが言うことをきかない

などの自助努力で解決できるものであれば、正当な理由になりません。

「もっと努力したらいい」「ほかの人に助けてもらっては?」など、退職を引き留められることもあるため、たとえそれが本心であっても、退職理由はしっかりとした正当性を持ったものを伝えるようにしましょう。

スムーズに退職するためにしておいた方が良いこと

年度途中での退職をすると、クラス運営に影響がでるため、『次に引き継ぐ人がスムーズに保育できるようにする』必要があります。

退職を伝えたら、まず

  • 児童票、書類、成長記録、日誌などの書類関連は記載しておく
  • アレルギーや気になる子については別途引継ぎのノートなど書面で残す

という引継ぎに向けての準備をしていきます。

また、退職が発表になった段階で

  • 保護者や子どもたちに退職することを伝え、挨拶をする
  • 関係しているスタッフへの挨拶回りをする

などをしておくと良いでしょう。

保育園の慣習もありますが、退職時に菓子折りなどを配る場合もあります。

年度途中で辞めるのは、転職・再就職に影響する!?

年度途中での退職は、他の保育園での再就職・転職の面接の際に「なぜ辞めたのか?」と、ほぼ必ず聞かれます。

ただ、転職・再就職に影響するかどうかと言うと、これは園側も内情に詳しい分、理解があるので、そこまで影響はしません。

 

ただ、「嫌になったら、また辞めちゃうんじゃないの?」と思われてるところもあるのは事実。

なので、面接では、まず「長く働きたい」「(面接を受けている)この園で働きたい」という気持ちをアピールしていくようにしましょう。

辞めた理由を問われたら、

「園の方針が合わなかった。だからこの(面接を受けている)園のこういうところで働きたい。」

「先輩職員と言い争いになることもあり、上手くやれなかった。だからアットホームな雰囲気のこの園で働きたい」

など、次につながる理由を添えるようにしましょう。

 

退職理由を伝えると、面接官に同情されるケースもあると思いますが、悪口や愚痴は面接にはふさわしくありません。

悪口や愚痴を言いたい気持ちは分かりますが、面接の場では、決して言わないようにしましょう。

保育士一年目の先生や、一時的な感情で退職を考えるあなたに

保育士の資格を取ったばかりの方や学校を卒業したばかりで、辞めたくなっている人には、もう少し踏みとどまってほしいと思っています。

1年目はとくに、どのように仕事をすれば良いか分からず、失敗ばかりなのが当たり前ですしね。

 

また、正直に「わからないから教えてほしい」と言えるのも新人ならではの特権です。

年数を重ねると、当たり前になっていることも、新人保育士からの質問を受けて、保育園内の風通しが良くなる場合や、必要に応じて研修を受けさせてくれる場合もあります。

1年目より、2年目、3年目と続けることで、保育士としての仕事の流れや園の1年の流れなども分かり、仕事が今よりもしやすくなっていきます。

 

時には、保育士の仕事は行事が忙しく激務で、体力的にも辛いし、辞めたいと思うこともあるでしょう。

ですが、1年間の子どもたちの成長を、保護者よりも間近で見られる幸せな立場でもあります。

3月の修了式には、1年間の出来事を思い出して「この子たちと離れたくない!」という感情が沸き起こってくることもある素晴らしい仕事なのです。

保育士は、子どもたちの成長を見守り、子どもたちから幸せをもらえる仕事でもあります。

一時的な感情で辞めるのは惜しい仕事だと私は思っているので、一時的な感情にとらわれず、まずは年度をクリアしてみてから考えても良いのではないでしょうか。