近年、保育士や幼稚園教諭を悩ませる「モンスターペアレント問題」が話題になっています。
モンスターペアレントとは、保育・教育機関へ理不尽な要求をする保護者のことです。
ただ、保育園におけるモンスターペアレントは、自分の子どもを想うがあまりに、園に対し無茶な言い分を申し出る場合がほとんどです。
保護者の不安を取り除き、円滑な関係を築くには、保育士はどのような対応をすればよいのでしょうか?
この記事では、保育園におけるモンスターペアレントの実態(口コミ)と、適切な対応方法をご紹介します。
現在、保護者との関係に悩んでいる保育士は、ぜひ参考にしてみてください。
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保育園・幼稚園で急増するモンスターペアレントの実態口コミ
保育士3年目 Aさん(25歳) 1歳児担任
イベント時の「うちの子の写真が少なくありませんか?」の一言が始まりでした。その後も「おむつは全部保育園が用意すべき」「仕事で忙しいから、夜ご飯を提供して」という非常識なクレームが来るようになって…。最近は、その保護者の顔を見ただけでも胃が痛くなります。
保育士8年目 Bさん(30歳) 5歳児担任
私のクラスには、モンスターペアレントと思われる保護者が3人ほどいます。ほぼ毎日、日替わりでそれぞれの保護者と面談をしています。そのため、日誌や月案などの事務作業や、イベントの準備を進めることができません。面談後、残業をして、できなかった作業を片付けるのですが、精神的、体力的にもつらいです。
保育士2年目 Cさん(23歳) 0歳児担任
隣のクラスに保育士にきつい態度を取る保護者がいて、担任である私の同期が対応していました。周りのベテラン保育士も協力したのですが、その子にとっては、かなりのストレス。職場も休みがちになり、最終的に、保育士を辞めて別の職種に転職してしまいました。
「モンスターペアレントか?」「正当な要求か?」の区別は、『建設的で、理論立てた会話ができるどうか」
「モンスターペアレント」と「正当な要求」を見分ける際に重要なのは、『保護者の態度・姿勢』です。
話し合いになった際に、問題解決に向けて、建設的で理論立てた会話ができるなら、それは「正当な要求」です。
しかし、感情的なだけで、問題を解決しようという意志が感じられない場合は、モンスターペアレントと判断できるでしょう。
例:子ども同士のトラブルが起こった場合 | ||
モンスターペアレント | ・先生の指導がおかしい
・保育園を辞めたい ・慰謝料を請求したい |
ただ「○○された」という怒りの感情しかぶつけない、あるいは突拍子もない、常識的でない改善策を提案する。 |
正当な要求 | ・いじめられた経緯について説明を受けたい
・○○ちゃんとは少し距離を置きたいが、先生の考える改善策も聞かせてほしい |
・「なぜそうなったか」に注目できる。
・第3者の意見が聞ける。冷静である。 ・改善のために工夫しようという意志がある。 |
トラブルになった際のモンスターペアレントに対する保育士の適切な対処について
① まずは保護者の話を丁寧に聞く
保護者の言い分を丁寧にヒアリングすれば、「保護者にとって、何が問題だったのか」「問題をどのぐらい把握しているか」が明確に見えてくるはずです。
また、モンスターペアレントとされている保護者には、ストレス発散のはけ口として、保育園にクレームを入れる人もいます。
その場合は、話を丁寧に聞いてもらうことで満足したり、感情が落ち着いたりするケースがほとんどです。
とにかく、相手の気が済むまで、さえぎらずじっくり話を聞くことが大切です。
ただ、子ども同士、保護者同士のトラブルの場合は、双方が感情的にならないよう、最初は同席させず、別々に話を聞きましょう。
話を聞く際、メモを取り、ボイスレコーダーで録音すれば、後で職員と情報共有する際に役立てることができます。
② 間違っていると思っても、その場で否定せずに「そうだったんですね」と話を聞く
相手が間違ったことを言っていると思っても、その場では否定をしてはいけません。
「ですが」「それは違います」と相手を否定するような言葉を言ってしまうと、「先生は全然わかってくれない!」と保護者が逆上して、問題が複雑になってしまうからです。
まずは、「~だったんですね。」と相手の気持ちを汲み取り、話しを聞きましょう。
ただ、相手が誤った解釈をしている場合は、しばらく時間を置いてから、正しい情報を伝えた方が、角が立ちません。
③ 嫌な気持ちにさせたことに対して謝罪する
相手の話を聞き終えたら、“保護者に対して嫌な気持ちをさせたこと”に対して謝罪しましょう。
モンスターペアレントと呼ばれる保護者は、「先生のせいで○○になった」と園側へ、一方的に責任を押し付けることがあります。
あきらかに保育園側の過失である場合は、全面的に謝罪をすべきです。
ただ、それが保護者の思い込みや、理不尽な言い分である場合もありますよね。
その場合は、保護者の言い分すべてをうのみにするのではなく、“嫌な気持ちをさせたこと”に対して謝罪をしましょう。
たとえどんな事情があっても、保護者が嫌な気持ちになったのは事実。
その点について、誠意を込めて謝罪しましょう。
④ 双方の妥協点、納得できる点について話し合う
次に、「保護者がどのような解決を望んでいるか」をヒアリングし、解決に向けて話し合います。
中には、非常識な要求を突き付けてくる保護者もいます。
その場合は、「確かに○○したいというお気持ちはわかります。ただ、~した方がご期待に添えると思います」と、理不尽な要求をかわしつつ、保護者の要望にできるだけ寄り添った解決策を提案しましょう。
子ども同士、保護者同士のトラブルの場合は、双方の意見を聞きながら、双方に最終的な解決策を提案します。
どちらかの意見に偏らず、双方の要望が叶う解決策を導き出しましょう。
また、保育士が不慣れな場合、「この人に任せて大丈夫なの?」と不信感を抱いてしまうので、新人保育士の場合は、上司に付き添ってもらった方がいいですね。
⑤ ほかの保育士との情報を共有し、再発防止に心掛ける
保育園内でのトラブルは、保育士1人だけの問題ではありません。
もし、保護者とのトラブルが起きたら、一人で抱え込まず、すぐに周りの保育士に相談しましょう。
情報共有は保育士の基本です。
会議やミーティングの場を借りて、トラブルの内容や経緯を説明し、解決に向けての進行状況も報告しましょう。
解決後も、最終的な状況を説明し、再発防止の対策を話し合うのがベストです。
職員全員が認知できるよう、連絡ノートや書類にトラブルの詳細をまとめて、記録に残しておくのも大切です。
保育士が子ども(保育園児・幼稚園児)と接する時に気をつけること・ポイントとは日頃から保護者と積極的にコミュニケーションを取ることが大切
保育士の仕事をする上で、保護者とのトラブルは避けて通れない道です。
時には、理不尽な要求を突き付けられ、疲弊することもあるでしょう。
しかし、誠心誠意対応すれば、保護者にもその熱意はきっと伝わるはずです。
周りの保育士に相談しながらも、慎重かつ丁寧に対応していきましょう。
また、こうしたトラブルは突然起こることではなく、日頃の積み重ねです。
保護者からの信頼を得るために、日頃からこまめなコミュニケーションを心掛けましょう。
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