【ブラック保育園の実態】その特徴と見分け方を把握し転職・復職に役立てよう

現役保育士の中で「この保育園の対応はまともじゃないのでは?」と、悩みを抱えている保育士さんも多いのでは!?

もしかするとその職場は、ちまたでウワサの『ブラック保育園』かもしれません。

近年、保育士の環境悪化に関するニュースは多く、2019年にもTV東京のテレビ番組「ガイアの夜明け」で、ブラック保育園の実態が特集され、大きな反響を呼びました。

この記事では、ブラック保育園の実態や特徴、見分け方を現役の保育士が紹介します。

今の職場はちょっとおかしいんじゃないかと思っている人は、ぜひ目を通してみてください。

参考 異常事態の保育園...保育士が一斉離職のワケ:ガイアの夜明けテレ東プラス

【実態】保育士が一斉退職して突然休園する保育園

保育士が一斉退職したニュースをご存知でしょうか?

2018年に、世田谷の「こどもの杜保育園」で働く職員9人が一斉に退職するというニュースが流れ、色々なところで反響がありました。

その保育園を運営する会社の社長は、「給料の未払いはない」と答えていました。

ですが、「労働環境の悪い“ブラック保育園”だったのでは?」との疑いの声もあがっています。

保育士が一斉に辞めてしまったので休園になり、突然の休園により、子どもの受け入れ先が決まらず、保護者も困惑していました。

 

実際、保育業界では、劣悪な職場環境により「子どもたちと接していても笑えなくなった」という理由で離職する保育士も増えています。

このようなブラック保育園がなくならないのは、国の監査が甘いことが原因のひとつでしょう。

国や自治体は悪質な保育園に対してどのような対応をしているのか?

  • 抜き打ち監査の実施
  • 保育園長研修会の実施

保育業界にはびこるブラック保育園に対し、ある自治体は、通常年1回の監査に加え、抜き打ち監査や、園長研修会を実施し、現場の監視を強めるようになりました。

しかし、これは一部の施設・自治体の例であって、全国的に導入された対策ではありません。

つまり、これといった具体的な政策がなされていないのが現状です。

また、監査の頻度は年1~2回と定まっておらず、その監査基準もあいまいです。

書類上のチェックだけで、監査員が入念に保育を見学し、保育内容や保育者・経営者の質を確認することもありません。

 

以上のような監査の甘さから、ブラック保育園を摘発することが難しい現状にあります。

ただ、政府もブラック保育園に対しては問題視しているため、今後の取り組みが注目されます。

ブラック保育園によく見られる特徴3つ

① 保育士にとって劣悪な労働環境(給料、労働時間、持ち帰り仕事、人手不足)

ブラック保育園の大きな特徴は、『保育士への不当な扱い』です。

ブラック保育園の多くは、人手不足のため、保育士1人1人の労働時間が長引くことが多いです。

中には、朝7時から夜の8時まで、1日12時間以上も働かされたというケースもあります。

また、毎日残業しているにも関わらず、残業代が支払われなかったり、調査で「残業0」を謳いたいがために、保育士に残業はさせず、持ち帰るように圧力をかけたりすることも。

それらの保育園では、「それが当たり前」という暗黙のルールがあるため、新人保育士は誰にも相談できずに、早々に辞めてしまうのです。

また、「みんなやっているから」という理由で、無理をして心身ともに病んでしまう人も少なくありません。

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② 保育サービスにお金をかけない

また、ブラック保育園は保育サービスの質の向上に対し、消極的です。

例えば、「施設の壊れている箇所の修理をしない」「画用紙を買わず、廃材ばかり使わせる」など、子どもの安全や、保育上で必要な消耗品を買わない場合が多々あるのです。

そういった必要な支出しないにも関わらず、同じ系列の新しい施設の開設や、広告代に運営費を使うこともあります。

2015年には、大阪の「みるく保育園」の副園長が運営費4600万円を不正流用し、ホストクラブで豪遊していたというショッキングなニュースもありました。

本来、保育園は子どもの安全や健やかな成長を助長するべき場所ですが、ブラック保育園は利益や私利私欲のためにお金を使うのです。

③ ワンマン経営で現場で働く保育士の声を拾ってくれない

まるで独裁政治のように、自分勝手な方針を突き出して、保育士を困らせるワンマン園長。

園長は、直接保育に関わっていないため、現場の大変さを理解していないことがほとんどです。

そのため、忙しい残業続きの現場で、「評判をよくしたいから、凝ったイベントを増やしたい」「毎月○○を保育に取り入れてほしい」と、好き勝手な発言をするのです。

全力を尽くしているにも関わらず、さらに高度な保育を強要したり、明らかに実現不可能な目標を掲げたりするため、保育士の疲労は極限状態に。

意見しても、「園長の言うことが聞けないのか」「保育士として失格」「考え方が甘い」と叱責するばかり。

このようなワンマン経営は、ブラック保育園の大きな特徴です。

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保育の質の低下は、保育士や子どもたちだけでなく保護者も不安

ブラック保育園で働く保育士は、毎日の残業による寝不足やストレスにより、常に疲労状態です。

そんな生活が続けば、もちろん保育の質も低下します。

子どもの「発達」や「面白さ」よりも、「手軽さ」「低コスト」を優先させた保育内容を優先させるのです。

さらに、仕事が山積みのため、子どもと一緒に遊ばず、事務仕事ばかりをすることで、子どもとの絆も徐々に薄れていきます。

慢性的な疲れにより、ボーっとすることが増え、防げたはずのケガや事故を見逃してしまうことも。

子どもの「成長」「安全」「情緒」が満たされない現場では、保護者も安心してわが子を預けることができませんね。

保育園を運営するのは主に「公営」「社会福祉法人」「株式会社」の3つ

「公営」は、市や区などの自治体が運営する施設で、公立保育園と呼ばれています。

 

「社会福祉法人」は、老人ホームや障害児サービス、保育支援を行う福祉法人が経営する施設です。非営利団体のため、寄付金や助成金をもらったり、免税してもったりと国から優遇されています。

 

「株式会社」は、営利を目的とした株式会社・有限会社が運営する施設です。社会福祉法人ほど国からの支援は得られませんが、充実した保育内容から保護者からの需要も高まっています。

近年は、保育士不足や待機児童の問題を解消するために、国は積極的に株式会社を受け入れ、企業経営の保育園を増やしています。

しかし、株式会社の中には保育サービスにお金をかけず、利益だけを追求するブラック保育園も数多く存在します。

もちろん、ブラック保育園は株式会社に限ったことではありません。

しかし、営利を目的とする会社運営の保育園は、法人や公立よりもブラック保育園の割合が多いので、注意が必要です。

求人情報と面接で見極める!ブラック保育園の見分け方

応募する前の求人情報で見抜く

1番気を付けるべきなのは『常に求人票を出している保育園』です。

求人の頻度が高いということは、それだけ人が辞めているということ。

辞める人が多いのには、何かしら理由があるので、どんなに条件が良くても、一度立ち止まって、よく調べましょう。

 

また、「月収27万円以上!」など、明らかに高すぎる給料をアピールする保育園は要注意です。

その給料の中に固定残業が入っていたり、経験の長い保育士の給料モデルだったり、実際にその額がそのままもらえるわけではありません。

さらに、イベントが多く、「いかにも楽しげな写真」が異様に多い求人にも要注意です。

面接・見学時に悪徳保育園を見極める

面接の時に、園長が高圧的だったり、給料面の質問をはぐらかしたりする場合は、気をつけた方が良いです。

本当に良い保育園の園長というのは、穏やかで、応募者から質問される前に、自分から給料面について細かく説明するはずです。

また、職員に笑顔がなく、あいさつしても返してくれない園もブラック保育園である可能性があります。

ブラック保育園で働く職員は、ストレスが多く、職員間の仲が悪いことが多いケースも多いです。

さらに、部屋があまりにも散らかっていたり、ほこりや汚れが目立っていたり、ボロボロの雑巾を使っていたり、清潔感がない保育園にも注意が必要です。

面接・見学の際は、施設の状態や職員の雰囲気をよく見て、その保育園がブラック保育園かどうかを見極めましょう。

今現在、ブラック保育園で働いているなら転職も視野に

実は、ブラック保育園に勤めていても、辞めない保育士は多いです。

どうしてなのかと言うと、保育士は真面目で責任感が強い人が多いので、子どものために働き続けてしまうのです。

また、「みんなやっているから」「自分だけ逃げるなんてできない」と、周りの保育士を気にかけるあまり、退職に踏み出せないのです。

ですが、辞めずに職場改善を試みても、1人だけで解決することは困難です。

同僚と結束して戦っても、最後にたどり着くのは一斉退職の道しかないこともあります。

 

もしも、今の職場環境が劣悪だと感じているなら、転職も検討したほうが良いでしょう。

辞めるとなると、保護者会や懇談会の場を借りて、保護者に伝えなければなりません。

ですが、いつも保育士の頑張りを見てくれる保護者は、きっと味方してくれるはずです。

勇気を出して、新たな職場を見つけるのも1つの選択肢です。

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保育士の労働環境が改善し、健全な保育園が増えることを願う

ただ、保育園の多くは「ブラック保育園」とも「ホワイト保育園」とも言えない「グレーゾーン」であり、両者の線引きもあいまいです。

実際のところ、人件費に75%をかけてくれる優良な保育園でも、他職種と比べて平均年収が低いのが現状です。

保育現場だけでなく、保育業界、政府自体が動かなければ解決しない、複雑な問題なのです。

保育士の給料を引き上げたり、労働環境の規定を極めたり、国による対策・改善を行えば、保育士が生き生きと働ける現場が増えるはず。

今後も、保育業界や政策に注目し、保育士の未来を応援しましょう。